父と、2人の祖母

父方の祖母が亡くなった、と母から電話があった。家族葬だし、遠方に住む私は来なくていい、と。102歳の大往生。

といっても、私にとっての祖母といえば、父の養母だった人で、十数年前に他界している。

一方、父の実母は、数えるほどしか会ったことがない。正直、「まだ生きてたんだ」が感想。父が幼少の頃、本家の跡取りとして養子に出され、それ以降は疎遠だったそうだ。

昭和の時代、跡取りのため養子縁組がされることは、珍しくなかった。でも、長男であった父は、7歳頃になって養子に出され、養母になかなか懐かず、幼少期ずっと厳しく当たられていたと、私は大人になって母から聞いた。
(母自身、姑である養母からは長年ひどい嫁イビリを受けたことを、後年になり初めて明かした。何も知らずにいた私たち兄妹は、ただ驚いた。)

戦後の田舎での、本家と分家の力関係の差。

養母だった人は、私の中では、孫に甘く優しい、フツーの祖母。幼い私はよく甘えていた。両親の昔話とは、全くの別人。

実母だった人には、一度だけ、プレゼントをもらったことがある。白地にピンクと茶色のアーガイルチェック柄の、上品なカーディガン。
思春期手前の私は、その服がなぜか気に入らず、愛想も振りまけなかった。ちゃんと御礼を言えたかも覚えていない。結局、一度も袖を通すことはなかった。今思えば、そんなに悪いものでもなかったのに。

滅多に会わない孫が、せっかくの贈り物にも喜ばず、彼女は内心ガッカリしたのではないだろうか。

晩年入院してからも、コロナ禍であったこと、父自身も老齢になり体が億劫になっていたことから、会うことはほとんどなかったそうだ。

今、私の息子は7歳。父が養子に出された年頃。

もし、彼を養子に出すことになったら。その孫が、ひ孫が、7歳になったら。
100歳になれば、忘れてしまうだろうか。

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